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Act9 2つの『覚悟』 ヒジョーにマズイ事になりました。 ハロー、ハロー。トップオーダーだ。 誰かこの状況を打開できる方法を簡潔にまとめて述べよ。 期限は私が短気を起こす前。締め切り厳守。 オーバー。 『……君は、あの時ヘリオポリスにいた子だな?』 狭いコックピットに声が反響する。 司はそれに答えず、ただ沈黙した。 だって、何を話せと? ……別に話すようなこと、無いんだけど……。いや、質問されてるのは分かるけどね。 うん。 で、 …どうしよう、ね。 『なあ、アンタさ、地球軍側の人間だったワケ?』 少し軽い口調の声が耳に届く。 ん~……コレはディアッカ・エルスマン? アスランがこんな口調になってたら何があったの、って素で聞いちゃうかもしれないノリ。 ・・・うわ、想像したら笑えてきた。 あのアスランが「グぅレイトぉ!!」とか叫ぶんだと想像したら笑えてきた・・・っ。 や、やばい呼吸が苦しくなってきた。 この場面で笑い転げるわけにはいかんよ自分! 落ち着け~、落ち着け~。 うぐ、横隔膜あたりが痛い。 司は無理矢理緊張感を担ぎ出してどうにか笑いの神をひっこめた。 思考が軽く脱線したが、それこそが現実逃避の現実逃避たる行いであるので気に留めない。 というか、気に留めたらこのクソ忙しい時に手間を余計に増やす事になるのである。本意ではない 面倒は回避するか誤魔化すか、あるいは別の方法で逸らすに限るのだ。 例に漏れず、当然この先のとるべき行動は一つである。 「ヘリオポリス?何の事でしょう、人違いでは?」 にっこりと笑っていけしゃあしゃあと言い放った。 さもありなん。余計な接触をすれば上司に追求される事は必至なのだ。 だからと言って特に何があるわけではないが、関わりを持ちたいわけではない。 返答に一瞬詰まった彼らは間抜けな顔をして、しかしすぐに復活した。さすが軍人である。 「ふざけるな!お前は地球軍だったんだろう!しらばっくれるな、ナチュラル!!」 「だぁから違うってーの。まぁでも、今は地球軍にいるから君たちの敵って事には変わりないかも ねぇ」 そもそもなんでこんなややっこしい事になったのか私が聞きたいくらいだった。 厄介事を惹き付けやすい体質にでもなったのだろうか。甚だ迷惑な事である。 誰がこんな平凡・平穏とかけ離れた展開を望むものか、元凶に熨斗つけて突っ返してやりたい。 司はぐっと拳を握った。 考えても今更な事だが、思い返すとふつふつと憤りが湧いてくる。 そう、なんで、どうして 何故に気が付いたらあんなデッドオアアライブの事態に陥ってたんだ! 握り締めた操縦桿がみしり、と音を立てる。 銃撃戦に巻き込まれるわ握りつぶされそうになるわ面倒事に強制参加させられてるわ。 あげくこっちは異世界に放り込まれたいわば被害者なのに理不尽な詰問を受けるわ本当の事を言え ば否定されるわじゃあ何を話せと言うんだ私は脚本家でも劇作家でもないんだぞって言うか何を言 っても信用しないくせに高慢に振るわれても正直に答える気なんぞアクセル全開でどこかに暴走し て走り去るっつーの世の中全部自分の思い通りに事が進むと思うなよ温室育ち! 『じゃあ、ここで墜とさせてもらうケド?』 「あぁそう好きにすれば?」 司は興味なさそうに物騒なその発言を素っ気なく流した。 その態度に目を見開き動きを止める。 何だこの軽いノリは。 思わず肩の力が抜けてしまい、逆に撃墜しようという気が薄れた。 こいつには命の危機という認識があるのだろうか。 それとも、そんな可能性は無いとでも思っているのだろうか。撃ち落とされるなんて、考えられな いとでも? そんな考えが少年たちの脳裏をよぎる。 実際は内心の苛立ちのあまり周囲への対応がぞんざいになった結果の発言だったのだが、それが彼 らに分かるはずもなかった。 『へぇ、ズイブンと余裕あるじゃん』 「んー、まぁね。だってさ、あれだもの」 『?』 「約束したからさぁー、ここで駄目になりましたとか言ったら・・・うわ、想像だけで怖・・・っ」 『……約束?』 瞼の奧、記憶の中に芽吹き始めたヴィジョンに、少し顔を歪める。当然ながら対峙する彼らには何 の事を言っているのかさっぱりだった。 それでも尚、司の口は語ることを止めようとはしない。 口に出す事で、感じた不安を打ち消そうとしたのかもしれない、と自分で想った。 それが唯一誰も知らない世界の中で、たった一つ拠り所となるものだからだ。 この世界で自分は一人だ。いや、この世界の誰もが一人なんだろう。本当の意味で一人ではない人 間が一体いくらいるのか。少なくとも自分は一人だと知っている。それは周りを拒絶しているわけ ではない。けれど、それはどうしようもない真実だった。 あの世界でも最初は一人だった。いいや、最初から一人だった。 それでも段々と一人ではなくなっていった。なぜか。彼らは一人の意味を知っていたからだ。 そんな彼らが、自分たちの与り知らぬこんな所で私が死んだと知ったら、それはもう荒れるだろう 。 せめて憎むほど怒ってくれればいいのに、あそこの人たちはみんなお人好しだ。 馬鹿と言ったその口で、こっちが泣きたくなる程の言葉を発すのだろう。馬鹿と言いながら別の意 味を含んだ、柔らかいくせに突き刺さると痛い言葉を吐くのだろう。 それが想像できるからこそ、怖い。 そんな人たちの前から永遠に消え去ってしまわなければならない恐怖。二度と会えない空虚。 そんなのは絶対御免だ。 もはや聞かせるためではなく、過去の言葉を再生するために己の口から言葉が湧いてくる。 同時にひどく懐かしい光景、懐かしい言葉の応酬が甦った。 繰り返し再生しては消えてゆく泡沫のようなその脆さを思い知る。それほど遠い日の事ではないの に、それでも一部を思い出しては記憶は彼方へ消えた。前後していたはずの言葉さえ思い出せず、 縋り付くさまなぞ笑い話にもならない。 「一緒にいようねって」 ツカサ 「どんなことがあっても」 あのさ 「それでも」 オレたち…… 「それでも」 ずっと 「ずっと笑って、生きていこうって、誓ったから」 約束な うん、約束 破んなよ? そっちがね ってオイ!! あははは…… だが何を拠り所とすればいいのか分からないこの世界で、寄り添えるのはただこの約束だけだった 。だからこそこうして口にしなければ本当に忘失してしまいそうだった。 感傷に浸る暇など今は無いと人は言う。 けれど一度気付いてしまうと無視する事は出来なかった。 それを弱さとするか強みとするかは別問題だろう。第一、理屈だけで全ての事柄を裏付けるのは不 可能だし、自分はそんなに器用な人間でもなかった。 司はギュッと手に力を込めた。 鍛え抜かれたエリートさんに、しかも3人を相手に勝てるなんてさらさら思っちゃいない。 普通に無理だ。 でも。 でも私にだって、譲れないモノはある。 足りない技術はド根性とヤケクソ度胸で何とかカバー! 前向きなんだか開き直りなんだか、気合い一心で皮肉に笑う。 「だから私も覚悟を決めたんだしね。悪いけど、どいてもらうわ」 『フン、死ぬ覚悟なんて軍人なら誰でも…』 「それも、あるけどね」 司はイザークの言葉を遮る。 「それもあるけど、それじゃ駄目」 『何?』 前の3機を見てにやりと笑う。 「それじゃ足んないって言ってるの」 『はあ?』 今度は訝しげな声が返る。もはやそれが誰の音声かなど興味は無かった。 「『覚悟』が、ね」 『!』 『なっ』 『は?』 三者三様の反応が司に届く。 司は通信ボタンに手を伸ばした。 「私は司・東雲。また会いましょうねぇ、お三方。出来れば会いたくないけど」 『! 待て!』 「待てませって。それにそんな焦んなくてもまた会うって。……必ず、ね。嫌だけど」 「戦場でね」 ブツン、と。 気が付いたときには、既に通信は切れていた。 後に来るのは、静寂。 「ふー……」 司は大きく息を吐きシートに沈む。 だがすぐに目に力を、輝きを取り戻し前を見据えた。 「さて、ゼロ。もう全てOK?」 “はい。全機能チェック完了致しました” んっふっふ。中々上手いこと時間稼ぎ出来たんじゃない?私。 ……ちょっと思いだしすぎちゃってアレだけど。 まだ十代なのになんでこんな苦労と心労に苛まれなきゃいけないのってちょっと涙が出ちゃったけ ども。そしてそれが今更だという事にも気付いちゃってちょっと笑えて思わず口もひきつったけど 、気にしない事にしとこう。 ま、俄然やる気が出たってモンよ。 「んじゃ、行きますか」 コキッと首をならす。 まだまだ、過去に思いを巡らせるには早すぎる。 過去の為に、その先の為に、やるべき事は決まっている。 「あ、速度最高で。あとレーダーとかの網にひっかかんないよーにね」 “承知しました。では、いきます” 「ヨロシク」 そして司はゼロと共に3機の前からあっという間に姿を消した。 敵前逃亡万歳! あ~…ナタルさんに何て言おう。 絶対何か言われる。ああ、目に浮かぶ……。 はは………言わなきゃいっか。 司は重いため息をついて宇宙を駆けた。 内心ではしっかりと保身の段取りを構築中である。 彼女を駆り立てる理由。 それは遠く深く、誰も知らない遙かな場所。 遠く、遠く。 記憶というのは厄介で、時にはそれが希望にもなり絶望にもなる。 私はこの世界で一人だと言うが、いくらでもそれを脱却する機会は得るだろう。 しかし私はそれを蹴り、与えられたチャンスに手を伸ばさない事を決めた。 なればこそ、私は一人を望み伸ばされる手を振り払い、己が為に進む。 所詮、天秤に掛けて大切なのはどちらだったのか。 これはただ、それだけの事に過ぎない。 比べる事そのものからして間違っているのだと、指摘する者は誰もいなかった。 next (05/09/19)→(07/04/09) 修正
Act9 2つの『覚悟』
ヒジョーにマズイ事になりました。 ハロー、ハロー。トップオーダーだ。 誰かこの状況を打開できる方法を簡潔にまとめて述べよ。 期限は私が短気を起こす前。締め切り厳守。 オーバー。 『……君は、あの時ヘリオポリスにいた子だな?』 狭いコックピットに声が反響する。 司はそれに答えず、ただ沈黙した。 だって、何を話せと? ……別に話すようなこと、無いんだけど……。いや、質問されてるのは分かるけどね。 うん。 で、 …どうしよう、ね。 『なあ、アンタさ、地球軍側の人間だったワケ?』 少し軽い口調の声が耳に届く。 ん~……コレはディアッカ・エルスマン? アスランがこんな口調になってたら何があったの、って素で聞いちゃうかもしれないノリ。 ・・・うわ、想像したら笑えてきた。 あのアスランが「グぅレイトぉ!!」とか叫ぶんだと想像したら笑えてきた・・・っ。 や、やばい呼吸が苦しくなってきた。 この場面で笑い転げるわけにはいかんよ自分! 落ち着け~、落ち着け~。 うぐ、横隔膜あたりが痛い。 司は無理矢理緊張感を担ぎ出してどうにか笑いの神をひっこめた。 思考が軽く脱線したが、それこそが現実逃避の現実逃避たる行いであるので気に留めない。 というか、気に留めたらこのクソ忙しい時に手間を余計に増やす事になるのである。本意ではない 面倒は回避するか誤魔化すか、あるいは別の方法で逸らすに限るのだ。 例に漏れず、当然この先のとるべき行動は一つである。 「ヘリオポリス?何の事でしょう、人違いでは?」 にっこりと笑っていけしゃあしゃあと言い放った。 さもありなん。余計な接触をすれば上司に追求される事は必至なのだ。 だからと言って特に何があるわけではないが、関わりを持ちたいわけではない。 返答に一瞬詰まった彼らは間抜けな顔をして、しかしすぐに復活した。さすが軍人である。 「ふざけるな!お前は地球軍だったんだろう!しらばっくれるな、ナチュラル!!」 「だぁから違うってーの。まぁでも、今は地球軍にいるから君たちの敵って事には変わりないかも ねぇ」 そもそもなんでこんなややっこしい事になったのか私が聞きたいくらいだった。 厄介事を惹き付けやすい体質にでもなったのだろうか。甚だ迷惑な事である。 誰がこんな平凡・平穏とかけ離れた展開を望むものか、元凶に熨斗つけて突っ返してやりたい。 司はぐっと拳を握った。 考えても今更な事だが、思い返すとふつふつと憤りが湧いてくる。 そう、なんで、どうして 何故に気が付いたらあんなデッドオアアライブの事態に陥ってたんだ! 握り締めた操縦桿がみしり、と音を立てる。 銃撃戦に巻き込まれるわ握りつぶされそうになるわ面倒事に強制参加させられてるわ。 あげくこっちは異世界に放り込まれたいわば被害者なのに理不尽な詰問を受けるわ本当の事を言え ば否定されるわじゃあ何を話せと言うんだ私は脚本家でも劇作家でもないんだぞって言うか何を言 っても信用しないくせに高慢に振るわれても正直に答える気なんぞアクセル全開でどこかに暴走し て走り去るっつーの世の中全部自分の思い通りに事が進むと思うなよ温室育ち! 『じゃあ、ここで墜とさせてもらうケド?』 「あぁそう好きにすれば?」 司は興味なさそうに物騒なその発言を素っ気なく流した。 その態度に目を見開き動きを止める。 何だこの軽いノリは。 思わず肩の力が抜けてしまい、逆に撃墜しようという気が薄れた。 こいつには命の危機という認識があるのだろうか。 それとも、そんな可能性は無いとでも思っているのだろうか。撃ち落とされるなんて、考えられな いとでも? そんな考えが少年たちの脳裏をよぎる。 実際は内心の苛立ちのあまり周囲への対応がぞんざいになった結果の発言だったのだが、それが彼 らに分かるはずもなかった。 『へぇ、ズイブンと余裕あるじゃん』 「んー、まぁね。だってさ、あれだもの」 『?』 「約束したからさぁー、ここで駄目になりましたとか言ったら・・・うわ、想像だけで怖・・・っ」 『……約束?』 瞼の奧、記憶の中に芽吹き始めたヴィジョンに、少し顔を歪める。当然ながら対峙する彼らには何 の事を言っているのかさっぱりだった。 それでも尚、司の口は語ることを止めようとはしない。 口に出す事で、感じた不安を打ち消そうとしたのかもしれない、と自分で想った。 それが唯一誰も知らない世界の中で、たった一つ拠り所となるものだからだ。 この世界で自分は一人だ。いや、この世界の誰もが一人なんだろう。本当の意味で一人ではない人 間が一体いくらいるのか。少なくとも自分は一人だと知っている。それは周りを拒絶しているわけ ではない。けれど、それはどうしようもない真実だった。 あの世界でも最初は一人だった。いいや、最初から一人だった。 それでも段々と一人ではなくなっていった。なぜか。彼らは一人の意味を知っていたからだ。 そんな彼らが、自分たちの与り知らぬこんな所で私が死んだと知ったら、それはもう荒れるだろう 。 せめて憎むほど怒ってくれればいいのに、あそこの人たちはみんなお人好しだ。 馬鹿と言ったその口で、こっちが泣きたくなる程の言葉を発すのだろう。馬鹿と言いながら別の意 味を含んだ、柔らかいくせに突き刺さると痛い言葉を吐くのだろう。 それが想像できるからこそ、怖い。 そんな人たちの前から永遠に消え去ってしまわなければならない恐怖。二度と会えない空虚。 そんなのは絶対御免だ。 もはや聞かせるためではなく、過去の言葉を再生するために己の口から言葉が湧いてくる。 同時にひどく懐かしい光景、懐かしい言葉の応酬が甦った。 繰り返し再生しては消えてゆく泡沫のようなその脆さを思い知る。それほど遠い日の事ではないの に、それでも一部を思い出しては記憶は彼方へ消えた。前後していたはずの言葉さえ思い出せず、 縋り付くさまなぞ笑い話にもならない。 「一緒にいようねって」 ツカサ 「どんなことがあっても」 あのさ 「それでも」 オレたち…… 「それでも」 ずっと 「ずっと笑って、生きていこうって、誓ったから」 約束な うん、約束 破んなよ? そっちがね ってオイ!! あははは…… だが何を拠り所とすればいいのか分からないこの世界で、寄り添えるのはただこの約束だけだった 。だからこそこうして口にしなければ本当に忘失してしまいそうだった。 感傷に浸る暇など今は無いと人は言う。 けれど一度気付いてしまうと無視する事は出来なかった。 それを弱さとするか強みとするかは別問題だろう。第一、理屈だけで全ての事柄を裏付けるのは不 可能だし、自分はそんなに器用な人間でもなかった。 司はギュッと手に力を込めた。 鍛え抜かれたエリートさんに、しかも3人を相手に勝てるなんてさらさら思っちゃいない。 普通に無理だ。 でも。 でも私にだって、譲れないモノはある。 足りない技術はド根性とヤケクソ度胸で何とかカバー! 前向きなんだか開き直りなんだか、気合い一心で皮肉に笑う。 「だから私も覚悟を決めたんだしね。悪いけど、どいてもらうわ」 『フン、死ぬ覚悟なんて軍人なら誰でも…』 「それも、あるけどね」 司はイザークの言葉を遮る。 「それもあるけど、それじゃ駄目」 『何?』 前の3機を見てにやりと笑う。 「それじゃ足んないって言ってるの」 『はあ?』 今度は訝しげな声が返る。もはやそれが誰の音声かなど興味は無かった。 「『覚悟』が、ね」 『!』 『なっ』 『は?』 三者三様の反応が司に届く。 司は通信ボタンに手を伸ばした。 「私は司・東雲。また会いましょうねぇ、お三方。出来れば会いたくないけど」 『! 待て!』 「待てませって。それにそんな焦んなくてもまた会うって。……必ず、ね。嫌だけど」 「戦場でね」 ブツン、と。 気が付いたときには、既に通信は切れていた。 後に来るのは、静寂。 「ふー……」 司は大きく息を吐きシートに沈む。 だがすぐに目に力を、輝きを取り戻し前を見据えた。 「さて、ゼロ。もう全てOK?」 “はい。全機能チェック完了致しました” んっふっふ。中々上手いこと時間稼ぎ出来たんじゃない?私。 ……ちょっと思いだしすぎちゃってアレだけど。 まだ十代なのになんでこんな苦労と心労に苛まれなきゃいけないのってちょっと涙が出ちゃったけ ども。そしてそれが今更だという事にも気付いちゃってちょっと笑えて思わず口もひきつったけど 、気にしない事にしとこう。 ま、俄然やる気が出たってモンよ。 「んじゃ、行きますか」 コキッと首をならす。 まだまだ、過去に思いを巡らせるには早すぎる。 過去の為に、その先の為に、やるべき事は決まっている。 「あ、速度最高で。あとレーダーとかの網にひっかかんないよーにね」 “承知しました。では、いきます” 「ヨロシク」 そして司はゼロと共に3機の前からあっという間に姿を消した。 敵前逃亡万歳! あ~…ナタルさんに何て言おう。 絶対何か言われる。ああ、目に浮かぶ……。 はは………言わなきゃいっか。 司は重いため息をついて宇宙を駆けた。 内心ではしっかりと保身の段取りを構築中である。 彼女を駆り立てる理由。 それは遠く深く、誰も知らない遙かな場所。 遠く、遠く。 記憶というのは厄介で、時にはそれが希望にもなり絶望にもなる。 私はこの世界で一人だと言うが、いくらでもそれを脱却する機会は得るだろう。 しかし私はそれを蹴り、与えられたチャンスに手を伸ばさない事を決めた。 なればこそ、私は一人を望み伸ばされる手を振り払い、己が為に進む。 所詮、天秤に掛けて大切なのはどちらだったのか。 これはただ、それだけの事に過ぎない。 比べる事そのものからして間違っているのだと、指摘する者は誰もいなかった。 next (05/09/19)→(07/04/09) 修正