croisement


れは、仕事帰りに 深夜の時間帯での勤務を終え、太陽が輝く時間帯に家路についていた俺は、有り得ない光景を目に したような気がして(・・・・・・余程疲れてンだな、俺。とっとと帰って早く寝るか、)と足早にその 場を去ろうと足を動かした。 「ガハハッ! ランボさん強いもんねー!」 ドカンドカンと続く轟音に、げんなりとしながらも気のせいだ気のせいだと言い聞かせる。 よくよく考えてみろ、真っ昼間の公園で牛柄アフロ見た目5歳児が上記の台詞をかましながらアホ ヅラさらしてンだぞ? どこのギャグマンガだ一体。 その日の俺は一切の家事を後回しにして寝る事を最優先にした。 耳に届く爆音は、きっと近所のテレビの音漏れだ。 れは、たまたま通った道で 次の日。 俺は昨日の事はさっさと忘れて、それでも今日も同じ事に遭遇するのは遠慮したかったので別ルー トを歩いていた。 多少の疲労感と共に足を進めていたその時。 ズザー! 見事なスライディングで一人の男が目の前に飛び込んできた。もしも足を止めていなかったら確実 に俺にぶつかっていただろう。 「いてててて・・・・・・」 右手で打ち付けたらしい箇所をさすりながら、男はよろよろと立ち上がる。いや、正確には立ち上 がろうとした。 が。 「うわっ!?」 今度は石も何も落ちていない場所で足をもつれさせ、再び地面にダイブ。 別にそれはいい。こいつが天然ドジ属性だろうが、俺にとっては何の関係もない。 だが。 俺は苛立ちを隠さずに眉を潜めた。 ドジをふむなら俺の前以外にしろ。(見ててイライラする) 結局こいつはまた転んでふらふらと立ち上がって電柱に頭をぶつけ、犬の尻尾を踏みつけて追いか けられていった。その後? ンな事俺が知る訳がない。 れは、久しぶりに立ち寄った喫茶店で 高校時代の同級生の父親が経営している喫茶店は、今も昔も時折顔を出している店だった。 しばらくコーヒーを飲んでいなかった俺は、久しぶりにそこに顔を出す事にした。 するとそこには。 「チャオっす」 ・・・・・・スーツを着た赤ん坊の姿が。 そしてその前にはエスプレッソ。 おいガキ、エスプレッソのカップは何で他のコーヒーカップと比べて小さいか知ってるか。 量を飲むためのモンじゃ無ェからだ。 思ったが、無駄に鍛えられた第六感でそれを胸にしまい込み、片手を上げるだけに留めた俺は賢明 だ。何せこの赤子、言葉までぺらぺらだ。 魔物やら魔術やらが今まで身近にあった俺としては、異常という言葉の境界線があやふやになりつ つある事に気付いた。 いらん事まで悟っちまった俺は、それを無かった事にして馴染みのマスターに注文を入れる。 「へぇ、お前分かってるじゃねぇか」 いつの間にか隣には、カウンターに腰掛けて楽しそうにこちらを見遣る赤ん坊がいた。 満足そうな顔で、俺の注文に合いの手を打つ。 「・・・そうか」 俺はそれだけを言ってカップに口を付けた。 「俺はリボーン。ツナの家庭教師だ」 聞いてもいねぇのに自己紹介をされた。そしてその言葉の中に知り合いの名前を聞いた気がして知 らず眉間に皺が寄る。 ・・・・・・綱吉、お前マジで最近どうなってやがんだ。 俺は不敵に笑みを浮かべるリボーンという存在に、綱吉の不憫さを垣間見た気がした。 つかの公園で 工事中のため通行禁止の道路から、仕方なく公園沿いの道を歩いていた俺。 すると案の定、公園には牛柄の見た目5歳児がアホヅラさらして笑っていた。 が、別のガキに泣かされていた。良くある事だ。 俺はいたって冷静にそれを傍観し、さてさっさと帰るか、と足を踏み出した。 ら、 「う〜っ、お前らなんか、10年後のランボさんにけちょんけちょんにやられちゃえっ!」 ドカン、と音がした。 そこはかとなく嫌な予感を覚えながら、おいおいまたか、と目を逸らしていると。 「さんっ」 聞いた覚えのない声が聞こえた。 誰だ? と思い辺りを見渡すがそれらしき人影は見られない。 気のせいか、と思いきや背中に結構な悪寒を感じた。その感覚のままにさっと身を翻すと、そこを 何かが通過した。 「なっ、なんでよけるんですか〜」 「黙れうるさい男に抱きつかれる趣味は無ェ誰だお前」 「ううっ、ひどいですよさん! 10年経っても変わらずひどいですけど今もひどいですっ!」 今、聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするんだが。 取り敢えず初対面の男相手に「ひどい」呼ばわりされる由縁も無いので「あぁ?」と睨み付ける。 「ひぐっ! え、えと、さん・・・・・?」 「・・・・・・・・・・・・なんだ」 「ぉ、怒ってる、んですか・・・・・・?」 まぁ間違ってはいない。 間違ってはいないが、それよりも誰だお前。 「え、そんなっ! ランボですよ僕!」 「知らねェよそんな名前」 「えぇっ!? ・・・・・・あ、そうか。今はまだ僕とちゃんと会った事が無いんですね」 「あぁ? ・・・・訳分からねェ事ほざいてんじゃねェぞ変質者」 「へっ!? ひ、ひどいですよ僕は変質者なんかじゃありませんッ!」 「初対面相手に抱きつこうとした時点で十分犯罪者だ」 「ひどっ、ちょ、ですから僕は―――ッ!」 ボン、と目の前で煙が大量に湧き出る。 咳き込む前に後ろへ飛び退けば、晴れた視界にぼーっと間抜けな顔をした牛柄見た目5歳児がこち らをじーっと見ていた。 ・・・・・・誰か説明しろ。何だ、コレは。 日。 「なぁ綱吉」 「な、なに・・・・・・?」 目の前の綱吉はびくびくと俺を見上げていた。 自分でも分かっているんだろう、俺がこれから何を言うのか。 「星へ帰れ」 「んな無茶苦茶な!?」 おそらくこの明らかな状態変化の原因はお前だろ。 好きでこうなったんじゃないんです・・・・・・。 哀愁を漂わせて綱吉は俯くが、そんな事は俺の知った事ではない。 っていうか助けて下さいよ!? 仕舞いには泣きついてくるコイツを、果たして見捨てるべきか否か、俺はしばし頭を悩ませた。 (08/03/05)