日記ログinおお振り
カキー・・・・ン、と耳に心地良い音が遠くから聞こえる。
あぁ、そういえばここ、高校か。じゃあ野球部か。
青春だなぁ、と思いながら、どうせなら近くで見たくて辺りを見渡す。
「お、」
入り口、みーっけ。
ざかざかと進んでいくと、やがて視界にはユニフォームを着た球児の姿があった。
そういえば、廉は野球部だったっけ?
就職してとても生き残れそうにない世界に飛ばされてそれから少しはまだ多少はマシな世界に飛ば
されて今度はえらく平和な所に来て家族が出来てて。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・いや、深く考えちゃ駄目だ。
うん、新しい家族には驚いたけど、父さんも母さんもいい人だし、弟の廉は可愛いし。
グルナードがかなりコンパクトサイズのかわいい小鳥サイズになったのは、哀れだが。
「あの、見学者の方・・・・・・ですか?」
「ん? あぁ、ごめんね。驚かせた。すぐに帰るよ」
「いえっ、そうじゃなくて、あの、野球に興味があるんですか?」
「野球が、っていうより弟がいるんだ」
「えっ!?」
「ほら、あそこ・・・・って、みんな一箇所に固まってるんだから分からないな。廉だよ。三橋、廉。
俺はその兄」
「えっ、三橋君のお兄さんなんですか!?」
うん? そんなに驚く事かな?
不思議に思いながらも頷くと、女の子はポカーンと口を開けたまま動かない。
代わりに女の子の声にこちらに気付いたのだろう、いくつもの視線が突き刺さる。
う、痛い。
「お、お、お」
けれどその中の一人は「お」の形で口を開き、ぷるぷると震える指で俺を指して、これまたぷるぷ
ると全身を震わせていた。
その様子に気付いた他の部員が、「おい、三橋?」「どうした?」「三橋の知り合いなんか?」な
どと声を掛けているが、廉は一向にその状態から解凍しない。
「お、」
「お?」
「お、お兄、ちゃん・・・・・・ッ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
廉がようやく一つの単語を絞り出した途端、今度は周りが固まった。
さっきからここの人たち、固まりすぎじゃ・・・・。
そして瞬間冷凍された部員達は、一斉に瞬間解凍されて全員が叫んだ。
「お兄ちゃん―――――――――――――――――!!!??」
いやぁ、すんごい団結力だね。さすが野球部。
-------------
「―――もとき」
「・・・・・・・・・・・・・・・・うるさい」
「もとき」
「・・・・・・・・うるさい!」
「もとき」
「うる、さ・・・・っ」
「お前は何もしなくていい」
「・・・・・・・・ッ!」
「怒れ。迷え。泣け。目を閉じて耳を塞いでうずくまれ」
「あ、に・・・・・・」
「―――俺が、許してやる」
「――――うっ、うあああああああぁぁああああぁぁぁあああああ―――――――――!!!」